ランクブレインが検索意図を決めるまで【SEO人工知能徹底解説】
RankBrain(ランクブレイン)とは、Googleが検索結果のランク付けに使用するAI(人工知能)のことです。その仕組みは、検索クエリと検索意図の関係をユーザーエクスペリエンス信号である「クリック率」、「直帰率」、「滞在時間(ドウェルタイム)」によって推測し、最適な検索意図を判断する役割を担っています。
ランクブレインはGoogleの検索ランキングの決定において「リンク」、「コンテンツ」に次いで重要とされ、SEOを意識したコンテンツ作成において決して無視できない存在です。
そこで本記事では、ランクブレインの仕組みや動作を検証し、理解することで、これからのAI時代のSEOに最も重要な「検索意図」について理解を深めるものです。
Googleランクブレインとは?
Googleが検索結果のランク付けに使用するAI(人工知能)の名前です。
ランクブレインは、2015年にアメリカのメディア「ブルームバーグ(英語)」で紹介され、公になりました。
開発当初はいろいろ問題がでていましたが、Googleはこれらの問題を日々解決し続けました。
そして2018年、「人間の自然な言葉を理解する検索エンジン」に生まれ変わったのです。
ランクブレインの仕組みを知っているのと知らないのでは、後々のサイト運営のコスパに大きく影響します。
仕組みを知らなくてただひたすらに記事を書いていたら、泥沼に陥ることも十分にあり得ます。
ランクブレインが観察するユーザーの行動
Googleからランクブレインの仕組みについて正式には公開されていませんが、Webデベロッパーとしての経験から、その仕組みを考えれば、
ユーザーの行動をリアルタイムで判断しています
下記はスマホで何かを検索した時の例です。
ユーザーつまりあなたが検索するときにとる行動
- 検索窓にキーワードを入力
- 検索結果が表示
- タイトルを見てタップ
- 難しすぎるので「戻る」をタップ
- 次のタイトルをタップ
- 表示が遅いのでまた戻る
- さらに次の結果をタップ
- わかりやすかったので2分ほど読む
以後繰り返し
このように、複数の検索結果を訪れることをアメリカのSEO業界では「ポゴスティッキング」と呼んでます。
ランクブレインの仕組み(フローチャート)
ランクブレインは、これらを「UX信号(ユーザーエクスペリエンス信号 = 言い換えればユーザー体験信号)」として正確に観察しています。
ここで注意を払うべきは「ユーザーが求める結果でなかった場合に「戻る」ボタンを押す行動」です。
「戻る回数が高い」と検出された場合はランクが下がり、
時間をかけて読まれているようなページはランクが上がる
この仕組みをフローチャートでみてみます。
ランクブレインは、このようにユーザーの行動を常に観察し、「1つ1つのキーワードに対して満足度と検索意図を絞り込みながら評価」しています。
ランクブレインを作る側の視点から言い換えれば、あなたが検索結果で行ったこと(クリック・直帰・滞在等)が「人工知能の教師」となって検索意図を教えてることになります。
ランクブレインがユーザー満足度を判断する3つのシグナル
ランクブレインは、ユーザーがそのコンテンツに満足しているかどうかを、次のシグナルによって判断します。
- クリック率 = 結果をタップしたとき
- 直帰率 = 戻るをタップしたとき
- 滞在時間(ドウェルタイム) = 記事を読み終わって検索結果に戻るまで
クリック率(CTR)
検索結果がいくつか表示されたとき、ユーザーがどの結果をクリックしたかの割合です。 略語でCTR(クリックスルーレート)。
ランクブレインは「クリック率が高いほど検索結果がユーザーの目に止まりやすく、より検索意図に近い」と判断します。
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直帰率
ユーザーがそのページ訪れて直ぐに戻るボタンを押して戻ったときの比率です。(英語でバウンスレート)
ランクブレインは「直帰率が高いほどユーザーがそのページに興味がない」と判断します。
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滞在時間(ドウェルタイム)
来訪したページに滞在して検索結果に戻るまでの時間です。
ランクブレインは「滞在時間(ドウェルタイム)長ければ長いほどユーザーがそのコンテンツの中身を読み、理解しようとしている(つまりコンテンツの質が良い)」と判断します。
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なぜGoogleはランクブレインを作ったのか
Googleで検索されるワードは毎日数十億件に及びます。
Googleはその内の約15%が意味不明で理解できなかったのです。
15%とは「約6回検索して1回は理解できない」ことになりますから、事態はかなり深刻です。
つまり、ランクブレインが作られた理由の1つは、
未知の検索を理解するため
ということです。
Googleはこれまで、エンジニアによって100%手動で作られた評価方法(以下アルゴリズムといいます)を使用して検索順位を決定していました。
ですが、この手法では日々新しく生まれる検索ワードやニーズに対応ができません。
そこで人工知能を使って
検索順位の決定要素を1つ1つの検索ワード毎に異なる
ようにしたのです。
この結果、エンジニアがアルゴリズムを作成するよりも10%優れた結果を返したのです。
そこで何が優れているかを検証してみます。
次の図は「ソニーが作ったグレーのゲーム」と検索した結果です。
「Playstation」が最初に表示されています。PS2でも、PS3でもPS4でもなく「初代」のプレイステーションです。
おそらくこんなワードを使用して初代プレイステーションを検索する人なんかいません。
検索ワードには「Playstation」なんて言葉は入っていないのにもかかわらず、私たち人間には「何となくわかる結果」となっています。
このキーワードには、ユーザーが求める「検索意図」があり、ランクブレインはそれをを理解しているのです。
そして同じ検索結果には「ゲーム機一覧」と「メモリーカード」という「何となく関係してそうな」記事も表示されています。ですが、ソニーが出したゲーム機の一覧なら分かるのですが、他のメーカーのゲーム機も含まれた一覧のようです。
そして、プレイステーション用のメモリーカードの販売ページの結果も表示されています。
検索ワードにはそんなワード一言も使っていません。
もう1つ検証してみます。
今度は先ほどのワードの「グレー」を「ダーク」に変えて検索してみます。
検索結果がガラリと変わり、ゲーム機本体の結果は全く表示されず、ゲームソフトに関する記事一色になってしまいました。
外観的なカラーではなく、色の名前(ダーク)によって連想される「人間のニュアンス」によって結果が変わっています。
つまり、
検索意図が複数あるため
これがランクブレインが作られたもう1つの理由です。
例えば「オリンピックの場所」というワードで検索するときを想像しながらGoogleの立場になって考えてみましょう。
この検索の真の意図は何でしょうか?
考えられるものとして、
- 次の夏季オリンピックについて知りたい
- 次の冬季オリンピックについて知りたい
- 最近終わったオリンピックについて知りたい
- 今すぐオリンピックが開催されている競技場への道順が知りたい。
- 古代ギリシャで行われた最初のオリンピックの開催地に関する歴史的な情報を知りたい。
こんな感じでしょうか。
さて、この検索意図に答えようとするとき、被リンクの数などの単純なシグナルだけでランク付けされていると想像してみましょう。
2018年に開催された平昌での冬季オリンピックのサイトが何百万ものリンクを獲得しているため、2020年の東京オリンピックの開催地を知りたいと思っても、平昌に関する結果のみを表示することになるでしょう。
この複雑かつ一般的な状況の中でこそ「ランクブレイン」の能力が発揮されます。
ランクブレインは2019年に「オリンピックの場所」を検索する人の意図は、平昌ではなく東京であることを理解しています。
ですが他にGoogleが対処しなければならないことがあります。
例えば開会式が開催される週に都内の人が検索したら、開会式の場所へGoogle マップで道案内しなければなりません。
つまり、今いる場所や時間、コンテンツの新鮮さなどから、最適な結果を提供する必要があるのです。
なので、仮に先の5つの検索意図があるとすれば、
- 【意図1】次の夏季オリンピックについて知りたい → 4個の結果
- 【意図2】次の冬季オリンピックについて知りたい → 2個の結果
- 【意図3】最近終わったオリンピックについて知りたい → 2個の結果
- 【意図4】今すぐオリンピックが開催されている競技場への道順が知りたい → 1個の結果
- 【意図5】古代ギリシャで行われた最初のオリンピックの開催地に関する歴史的な情報を知りたい → 1個の結果
合計5つの意図に10個の結果
ランクブレインは、こんな感じで意図が複数あるときは「1つの検索意図につき、複数結果のセット」に分解します。
分解の比率もその日その場所で違います。
動きがわかったところで次は対策です。
対ランクブレイン対策
ここまでで確実に言えることは
「検索は、キーワードのマッチングではなく意味のマッチング」
となったことです。
そのため、対ランクブレインでは「キーワードの戦略」が異なります。
ロングテールキーワードが無くなった!?
アメリカのSEO業界ではロングテールキーワードによる戦略はすでにオワコンです。そして、1ページ1キーワードも同じくです。
SEOに関する記事の中に、よく「ロングテールキーワード」を1ページ1キーワードで狙うとよいことが書かれています。
これまでは、あまり検索されそうのない、ロングテールなキーワードに対して、数百の異なるページを作るのが当たり前でした。
ですが、検索意図を理解するランクブレインには意図が同じようなロングテールなキーワードを狙っても同じものと解釈してしまうのです。
それでは、代わりに何をするべきなのでしょう?
ミドルキーワードを狙って最適化
ロングテールキーワードの代わりにミドルキーワードを狙います。
ミドルキーワードはある程度検索ボリュームの高いキーワードのことで、これを最適化するのです。
まずは中心に1つのミドルキーワード、その周りに狙うロングテールを置いてターゲットとします。
そうすることでランクブレインは自動的にそれらキーワードと類似した検索意図を持つキーワードに対してランク付けします。
そして1つの記事の中に複数のロングテールの検索意図に対する答えを書いていくのです。
つまり「カテゴリーページ」を中心に最適化します。
人工知能なんか怖くない
ランクブレインの最適化は簡単です。
人間に聞こえるコンテンツを作成してみましょう。
これは、かねてからGoogleに言われていることですが、「人と話すように」書くことです。
機械のように記事を書いてしまっては、ランクブレインは混乱し、たちまちランクは落ちてしまいます。
ランクブレインが混乱するってことはユーザーが混乱しているってことなのですから。
よく言われる「ユーザーファーストになれって」ことも、この仕組みを知っていれば納得いきますよね。
堅苦しい記事と人間味のある温かい記事、どっちがユーザーにとってやさしいですか?
相手に理解してもらうために、あなたはどのように話をしますか?
Googleはこのランクブレインによるシグナルを「3番目に重要」といっています。
あなたが書いたコンテンツを何度も読み、それが自然に聞こえるかどうか、相手に理解できるかどうか尋ねてみましょう。
会話のように聞こえる場合、日常生活で使用する自然な言葉のように聞こえる場合、その記事はランクブレインに最適化されています。
という訳で今回は以上です。